私が子供のころ、お正月にはスーパーや食料品店は3ヶ日までお休みでした。また、お正月は家事を休んで家族そろってのんびりできるように、母が12月30日ごろからせっせとおせち料理を仕込んでいたように記憶しています。
このごろは24時間のコンビニもあるし、スーパーやデパートもお正月から営業するのも当たり前になりました。
残念ながら、だんだんとおせち料理を手作りする家庭も少なくなって来た気がします。
ところで2013年に和食がユネスコの文化遺産に登録されたのをご存知ですか?その理由は、以下のとおり。
- 日本の海の幸山の幸、各地に根ざした様々な食材を用いている
- 素材の味わいを活かす調理法や調理器具が工夫されている
- 栄養バランスに優れている
- 自然の美しさを料理で表現している
- 年中行事との密接なかかわりがある
どうです?すごいですね~!
私は、「和食」が世界に誇れる文化なんだと知って、とてもうれしくなりました。おせち料理には和食の特徴がすべて凝縮されていると思うんです。
そこで、お祝い料理の文化である、「おせち料理」を歴史から学び、その意味や由来を調べて改めて見直してみたいと思いました。
おせち料理の意味
おせち料理は、お正月に食べるお祝いの料理で、漢字では「御節料理(おせちりょうり)」と書きます。
季節の変わり目などに祝い事をする日を「節日(せちにち)」と言います。これは、中国が唐の時代に、一年を竹のように節で区切って特別な日を「節」と言い、日本もそれにならったから。そして、節日に神様に供える食べ物のことを「御節供(御節句)おせちく」と呼んでいました。
おせちは、この「御節供(おせちく)」が略されたものとされています。
おせち料理には中国からの伝来が関係しているのですね。その由来や歴史をひもといてみましょう。
おせち料理の由来と歴史をさらっと紹介
- 古代中国で奇数が重なる日は、神にお供えものをし無病息災を祈り邪気を払う行事が行われた
- 奈良時代には中国から伝わった行事が宮中で行われるようになり、神様に感謝する儀式のお供え料理を(せちく)と言っていた
- 江戸時代になって五節供(ごせっく)が定められ、祝日のごちそうは庶民の生活の中にも広がる
- 江戸時代の終わりには五節供の中でもお正月の晴れの料理をおせち料理というようになる
- お皿に盛られていたごちそうが、明治時代以降から重箱に詰めるように
- 第2次世界大戦後にデパートで「おせち」の名で発売を始めてから「おせち料理」がポピュラーに
それでは、これらのことをひとつずつ説明していきますね。
中国から伝わり宮中の行事の料理に
おせち料理の「おせち」は御節供(おせっく、おせちく)から来ています。これは中国から伝わったことと先ほどもありました。
はるか昔から日本は「遣隋使」や「遣唐使」など使いを中国に送っていました。仏教などを学部のと同時に中国の文化や行事も伝わってきました。
お隣の国として中国と親しくしていた事がわかりますね。今は少し微妙な日本と中国の関係ですが、お互いに尊重しあい、学びあえるといいなあと思います。
ちょっと横道にそれてしまいました・・・・。
古代の中国では、3月3日や5月5日のように奇数が重なる日は、おめでたいけど、その反面悪いことが起こりやすいと思われていました。そこで、神様にお供えものをして、無病息災を祈り邪気を払っていたのです。
それが奈良時代(710年~794年)頃、日本に伝わります。奈良時代から平安時代にかけて宮中では、季節の変わり目=「節目」に神様に感謝し邪気を払う日節会(せちえ)の行事が定着しました。
奈良や平安時代の宮中行事・・・舞を舞ったり神様にお供えするごちそうを作ったり。
なんて優雅なんでしょう・・せわしない毎日を送る私には、優雅すぎて夢のような世界に感じてしまいます。(笑)
その行事に供える豪華な料理のことを、節目に供えるから御節供(おせっく又はおせちく)というようになりました。これが現代のおせち料理の語源と言われています。
節会(せちえ)は、このように宮中や貴族社会で行われていた行事でしたが、江戸時代になって庶民にも広がっていきます。
江戸時代には庶民に広がる
江戸時代になって徳川幕府によって「五節供(ごせっく)」が正式な祝日に定められました。
五節供とは、1月7日の人日(じんじつ)、3月3日の上巳(じょうし)、5月5日の端午(たんご)、7月7日の七夕(しちせき)、9月9日の重陽(ちょうよう)の5つです。
「五節供ってなに?」という方でも「七草」「ひな祭り」「子どもの日」「七夕」「菊祭り」といえば聞いたことがありますよね。
これらの行事が次第に庶民の生活の中にも広がっていったのです。貴族や武士の行事をまねて、庶民が暮らしに取り入れていきました。
江戸時代の庶民のエネルギーってパワーがありますね。
私は北斎の浮世絵が好きで、時々美術館に見に行くのですが、浮世絵で見る江戸時代って庶民に活気があって、生き生きと暮らしを楽しんでていいなぁと思います。
これら五節供の行事食だったおせち料理は次第にお正月のごちそうのことになっていくんですね。
おせち料理はお祝い膳からお正月料理に
もともとは五節供のお祝い料理はを全部おせち料理と呼んでいたのが、次第に1年の一番おめでたい日を祝う正月料理のことを指すようになりました。
日本人にとって盆と正月っていうくらいお正月はおめでたい日ですものね。
実は私、結婚後は毎年お正月には実家めぐり。なのでおせちは作らず実家のおせちを食べるばかりです。「いつもごちそうさま~!」
おせち料理を神様にお供えし、お客様をもてなし、家族も食べる料理として、一品一品に様々なおめでたい意味を持たせるようになったのが江戸時代後期のころからでした。実はこのころ「おせち」とは言わず、「食積(くいつみ)」や「蓬莱(ほうらい)」と呼んでいたそうです。
重箱に詰めるようになったのは明治時代から
当初はお膳やお皿に盛りつけていたものが次第に重箱に詰めるようになったのは明治時代以降なのです。なぜ重箱に詰めるようになったのでしょうか。
実は見た目が豪華、重ねてコンパクト、保存にも向いているので、重箱が使われるようになったというのは実用性を重視したから。
一年の始まりの大切な日、お正月には縁起物のごちそうを重箱に詰めることで、幸せやおめでたさが重なるようにとの願いをこめました。また、重ね合わせることで場所を取らず、お客様にもそのままお出しできる、蓋をすることで保存もしやすいといった理由もあったようです。
おせち料理の名前はデパート商戦だった
実はおせち料理という名前が広く使われるようになったのは第二次世界大戦後、デパートで発売を始めてから。
それまで各家庭で作られていた正月料理が、デパートでも販売されるようになった時に、箱詰めにした正月料理を「おせち」という名称で売り出したのがきっかけだと言われています。
今ではデパートやネットで美しく豪華に盛り付けられた「おせち」はすっかり定番になっていますが、戦後に発案した人はすごい発想だと思いませんか?
ここから、おせち料理にこめられたいろいろな意味を説明します。
縁起を担ぐおせちの中味それぞれの意味
古くから神様に無病息災を願い、大切なお供えだったおせち料理。一年の始まりの大切な晴れの食事として、おせちには縁起を担いだり、幸福や金運、長寿を願う意味があります。
とてもポピュラーなおせち料理の定番を見ていきましょう。
数の子
数の子はニシンの卵。たくさん子供が生まれ子孫繁栄するようにという願いが込められています。塩漬けにして作るので日持ちが良いことも理由ですね。
塩抜きして、出汁につけておくととってもおいしいですよね!
プチプチした食感で人気です。お正月のお酒が進む一品です。あー、食べたくなってきました。
黒豆
黒豆は大豆ですね。「まめ」は元気の意味で、健康に暮らしたいという気持ちが込められています。ふっくらつやつや黒々とした色合いは、重箱の中を引き締め、色合いを引き立たせます。黒色には魔よけの意味もあるそうです。
ふっくらと柔らかく仕上げるのがほんとにむずかしいんですよ~。
栗きんとん
金色に輝く栗きんとんは金運を願う縁起物。お醤油や塩で濃いめに作られたものが多いおせち料理の箸休めにもなりますね。
我が家はみんな好きであっという間になくなってしまいます。
田作り
田作りはカタクチイワシの小魚を煎り、砂糖とお醤油を甘辛くからめたものです。昔はたんぼに小魚を肥料として撒いていたことから「田作り」と呼ばれます。作物が豊作でありますようにとの願いが込められています。
田作りは思いのほか簡単に作れますよ♪
そのほか、海老は腰が曲がるまで長生きできるように、昆布は「よろこんぶ」大根と人参で作る紅白なますはお祝いの「水引き」を現していておめでたいという意味があります。
まとめ
ここまでのことをまとめてみますね。
- 古代中国で季節の変わり目の「節」に行なった行事が日本に伝わった
- 奈良時代に日本の宮中行事となり、お供えの食べ物を「御節供(おせちく)」と呼んだ
- 江戸時代には祝日のごちそうが庶民の生活に取り入れられていった
- 江戸時代後期にはお正月のごちそうのことをおせち料理というようになった
- おせち料理が重箱に詰められたのは明治時代以降
- 戦後、デパートで重箱に詰めて「おせち料理」として売り出した
どうですか?おせち料理にはこんな意味や由来があったのです。
デパートのおせち料理といえば、
最近は伊勢エビとかアワビ、高級牛のローストビーフが詰められた、3万円~5万円、またはそれ以上する高級なおせち料理も見かけます。
古来から折々の季節の節目に、神に感謝し、厄をよけようと丁寧に料理をしてお供えしたごちそう。
その文化に思いをはせて、自分で、紅白のなますとか、ふっくらした黒豆とか、一品、二品でも心をこめて手作りのおせちでお正月を祝ってみるのはどうでしょう?
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